第1章 比較
第2節 模倣
第1項 引用元

それぞれの引用元を記載したとおり、マンガ『ONE PIECE』と、小説『機動戦士ガンダムUC』のセリフの一節だ。

『ONE PIECE』は『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』について、『機動戦士ガンダムUC』は『ラプラスの箱』について語っている。

第2項 既視感

ふたつの作品を両方とも読んだことのある読者なら、これらのセリフに読み至った時、奇妙な既視感にとらわれたことだろう。

白ひげは、『ラプラスの箱』のことを説明しているのだろうか?

リディ・マーセナスとミネバ・ザビは、『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』が引き起こす「世界中を巻き込む程の“巨大な戦い”」を恐れているのだろうか?

フル・フロンタルとバナージ・リンクスは、『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』について言い争っているのだろうか?

第3項 類似点

両作品には類似点がある。

なお、海賊が探し求めるお宝は『宝箱』に入っているのが定番なので、ここでは『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』も『ラプラスの箱』も、同様に『箱』と表現している。

① 『箱』を探す旅
『ONE PIECE』では、『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』を探し求めて航海をする。
『機動戦士ガンダムUC』では、『ラプラスの箱』を探し求めて旅をする。

② 『箱』の中身が分からない
『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』と『ラプラスの箱』は共に、中身も在処も分からない。

③ 『箱』を開けると世界がひっくり返る
『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』を見つけると、「世界がひっくり返る」。
『ラプラスの箱』を開くと、「世界が覆る」。

④ 『箱』への道程
『ONE PIECE』では、ログポースが次の島への針路を示し、『箱』への道程を段階的に進むことができる。
『機動戦士ガンダムUC』では、ラプラス・プログラムが次の指定座標を開示し、『箱』への道程を段階的に進むことができる。

⑤ 『箱』の在処はスタート地点
『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』は、“偉大なる航路(グランドライン)”を一周した最終地点(つまりスタート地点リヴァース・マウンテン双子岬の裏側)にあると考えられている。
『ラプラスの箱』は、色々めぐった後、スタート地点のスペースコロニー「インダストリアル7」にあった。

第4項 偶然か故意か

列記した両作品の類似点は、はたして偶然であろうか? あるいは故意であろうか?

どれも「ドラゴンクエスト」に代表されるロールプレイングゲームの基本フォーマットのようなものなので、両作品が共にそのフォーマットを踏んだだけ、とという見方もできるだろう。

ところが、類似点は『箱』に関するものだけではない。

本稿の結論を先に申し上げれば、これは偶然ではない。どちらかがどちらかの作品を模倣している、と考えている。

それは第一に、作品の世界観の根底に関わる部分で、多様かつ不気味なまでの類似が、両作品に散りばめられているからだ。本稿ではこの点をひとつひとつ詳細に検討していく。

石碑…思想…蝸牛…兵器…“D”

第二に、『ONE PIECE』及び福井作品は、その他の作品の模倣と思しき点がそもそも非常に多い。この点は本章でそのさわりを紹介する。

もっとも、すわ盗作か、パクリかと疑うのは早計だ。

小説やマンガに限らず、あらゆるジャンルの創作活動は手本とする先行作品の模倣から始まる。

極端な話しではなく、先行作品からの影響を全く受けていない純真に独創的な作品などありえない。

第5項 巧みな模倣

清水良典著『あらゆる小説は模倣である。』では、「模倣」を次の三つに分類している。

① 自分の独創と思い込んで二番煎じや紋切り型に陥ってしまう無知な模倣。

② 他の作品をなぞって取り込み、その形跡をたやすく見破られてしまう下手な模倣。

③ もとの作品を土台にして別個の作品に仕上げてしまう巧みな模倣。

両作品の作者はおそらく、自身の創作手法が③「巧みな模倣」であることを自負している。

ゆえに、敢えて意識的に、模倣の足あとを作中に残す。巧みな模倣の結果、独創性を獲得したと見える部分においても、その出典がどこにあるのかを示す手掛かりを残している。

特に福井にはその傾向が顕著で、それは福井のルーツが、江戸川乱歩賞を受賞してデビューした推理小説家であったことに因るのかもしれない(もっとも、その受賞作からして到底推理小説とは呼びがたい破天荒な代物ではあったが)。

読者にヒントを与えることで物語の結末の推理を促している。かといって、元ネタ通りの結末を迎えるわけではない。

③「巧みな模倣」は先行作品を踏み台にして自らの作品をより高い次元に押し上げる。より納得のいく結末、よりカタルシスの得られる結末、もっと言えば、あるべき結末をも目指すものだ(福井作品の分析は、別稿で行う予定だが、本稿でも後段でそのさわりだけ紹介しておく)。

そのような意味において、彼らの模倣は盗作やパクリといったネガティブなイメージの言葉で定義されるべき類のものではない。

第6項 オマージュ

かといって、オマージュとも異なるように思う。

オマージュとは、

『すべての小説は模倣である。』著:清水良典
「偉大な先人への敬意を表明する行為として、その文体や、ある作品のストーリーを模倣する態度」

である。同感だ。加えて、

「オマージュを捧げることは相手へのへりくだりであり、師と仰いで弟子となることを表明するに等しい」

とも評している。そう思う。

ただ、両作者の「模倣」は、そんなへりくだった態度ではない。

決して敬意がないわけではない。良いと思うからこそ模倣する。それでいて、部分的な模倣を作中密かに忍ばせるといった控え目で謙虚な姿勢からは程遠い。

「元ネタを踏まえてオレはこんなふうに書いてみたけど、どうよ!?」とでも言いたげで、むしろ挑戦的、挑発的ですらある。

そんな両作の模倣は、「模倣」という単語ですらふさわしくない。

そこで本稿では、「模倣」に代わって「材源」という単語を使用する。


あらゆる小説は模倣である。  著:清水良典

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